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デジタル社会で学習評価の安全性と価値ある学習体験を両立する | ターンイットイン

The Turnitin Team
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Amanda De Amicis
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コロナ禍をきっかけにリモート学習やハイブリット授業など、オンライン学習が定着したことで、学習スタイルが多様化し、 学習評価の安全性への意識が高まっています。ここ数年、世界中の教育機関がデジタルでの学習評価に対応するために力を尽くしてきました。 なかでもハイステイクス・テストによる総括的評価を安全に実施することが難しく、 多くの教育機関が間に合わせのカリキュラム変更を余儀なくされました。すでにデジタルインフラ活用の準備が整っていた教育機関でさえ、 通常の基準どおりの学習評価を、これまでにない規模で保証することに課題を抱えていました。 このような移行期間を経た今、 学習評価の安全性について、どのような長期的な展望をもてるのでしょうか?

デジタルの世界において、オンラインやハイブリッドの学習環境はこれからも合理的な学習手段であるという点では考えが一致していますが、 全員が一様に学習評価の課題に対応しているわけではありません。教育機関の方針は多岐にわたっており、 授業内での評価を重視することで学生が感じるプレッシャーを緩和して不正行為への誘惑をなくそうとする取り組みや、形成的な評価手法を増やす取り組み、さらには、 許可していない外部支援やカンニングを防ぐためのオンライン試験監督ツールを活用する取り組みまであります。

公正で正確な学習評価に向けて、学生に悪影響を与えることなく学習評価の安全性を保証するには、 教育機関はどのように取り組めばよいのでしょうか? 今回は、学習評価(アセスメント)を見直す中で、 注目されている実践とその動向について探っていきます。

アカデミック・インテグリティが注目を浴びる現状

評価の安全性に対する現在と未来の教育現場の取り組みを説明するまえに、その構成要素について考えるのが妥当です。 評価の安全性の権威であるフィリップ・ドーソン教授(オーストラリア、ディーキン大学)は、著書『Assessment Security in a Digital World』 (デジタル世界における学習評価の安全性)において評価の安全性をつぎのように定義します。「不正行為の試みに対して、 学習評価を強固にするための措置のこと。これには、不正行為の試みを検知し、立証するためのアプローチや、 不正行為を困難にするための対策も含まれる」

以前は、試験環境の安全を守るということは、教員や試験監督者が机間巡視し、「カンニングペーパー」 などの不正物がないかを目視でチェックしたり、学生同士が意思疎通を図って共謀するのを防いだりすることがイメージされました。コロナ禍をきっかけに、 完全対面式の評価環境から、当初は完全なリモート環境に切り替え(少なくとも高等教育においては)、 そして今はハイブリッド環境に落ち着いています。 コンピュータのスクリーンや関連機器が教員の視界をさえぎるようなオンラインのデジタル世界では、 従来型の評価実践を拡張する必要があることは明らかです。

とは言え、評価の安全性を単純にプラットフォームや実施方法の問題として狭い視野で捉えるのではなく、 評価設計のプロセスや組織文化全体の根幹にあるものを見ることが重要です。

前述したドーソン教授の定義では、評価の安全性については事前的な措置と事後対応、つまり、予防と検知の両面が指摘されています。 ドーソン教授は両者の違いについて、評価の安全を守る方策を「 敵対的・懲罰的・立証的」とし、 そのコインの裏側に「肯定的・教育的・価値観ベース」のアカデミック・インテグリティ(学問における誠実性・公平性・一貫性) があると区別しています。教育機関が学生を教育してアカデミック・インテグリティの文化を醸成する一方で、不正行為と闘い、 不正行為が発生した場合にはそれを検知するメカニズムによってアカデミック・インテグリティを支える必要があることが前提とされています。事実、 この二面性こそがターンイットインの製品の原動力となっています。当社製品では、類似性レポート により盗用・剽窃の可能性を教員に示すとともに、 学生にはフィードバックやライティングの指導ツールとして、公正かつオリジナルな成果物をつくりあげるための形成的学習の機会を提供し、 学びを支援します。


産業界の需要における公正性の役割

盗用・剽窃といった不正行為は不注意から起こり得ることを認識するのも重要ですが、この記事では、当初の目的に沿って、意図的・ 計画的な学術不正に焦点を当てます。評価中に不正を試みる動機には、さまざまな要素が交錯している可能性があります。ホールデン、ノリス、 クールマイヤーが2021年に公表した、オンライン評価におけるアカデミック・インテグリティについてのリサーチ・レビューでは、学生が不正行為をする動機について、次の4つの主要因が指摘されています。

  1. 個人的な要因
  2. 組織的な要因
  3. 実施媒体
  4. 評価固有の要因

ここでは、今回のテーマにもっとも関連の深いものとして、 最後2つの要因が学習経験と不正行為の割合にどのような影響を与えるのかを見てみましょう。 オンライン環境が現状にどのような影響を及ぼしているかについて、ホールデンらは「対面授業よりもオンライン授業のほうが不正行為が多い (試験のようなハイステイクス・テストではとくに)という認識が広まっており、約42〜74% の学生がオンラインのほうが不正行為が容易である考えている」と指摘しています。このことから、教育機関が行動を起こし、 オンラインでの評価の安全性を守り、学生の認識を変える必要があることが分かります。

学習評価の安全性を守るための設計

ドーソン教授は一連の研究において、ある種の試験は「不正行為を防ぐ」という思い込みを是正しようとしています。アカデミック・ インテグリティ研究で有名なキャス・エリス教授とトレイシー・ブレタグ教授による、論文代行のデータ分析でも、同様の指摘があります。これらの研究では、 評価設計には多層的なアプローチが必要であることが示されており、 ドーソン教授は評価の安全性を守るために教育機関が考慮すべき7つの基準を挙げています。

  • プログラム全体のカバー率:どの程度安全が確保されるべきか
  • 真正性の証明(認証):学生本人であることをどのように確認できるのか
  • 環境管理:意図された環境で課題が行われたことをどのように確認できるのか
  • 不正行為の難しさの測定基準:課題ごとに、不正行為を行うのがどれくらい難しいかを知る必要がある
  • 検知精度の測定基準:検知方法が有効かどうかを知る必要がある
  • 証拠の測定基準:不正行為事例を立証できるようにする必要性がある
  • 普及率の測定基準:検知した不正行為、未検知の不正行為、証明した不正行為の割合を知る必要がある。

ここでは、教育的/敵対的な観点から、 評価結果の公正性と学生の学習体験に影響を与える2つの具体的なアプローチについて詳しく見てみましょう。

  1. オーセンティックな試験

多くの教員が、より「オーセンティック(真正)」な試験(つまり、 実生活を模した環境で学生が知識やスキルを活用できる試験)になれば、学生が不正行為を行う可能性が低くなる、と考えています。また、 学生の生活に密着した具体的な試験を作成することは、 労働力として将来必要なスキルを学生につけさせようという教育界の大きな流れとも合致しています。ドーソン教授や他の研究データによると、 オーセンティックな学びは学生の支持を集めており、一般的に他の試験タイプよりも不正行為の可能性が低いことが分かっています。

当社の動画コンテンツIntegrity Mattersの最近のエピソードのなかで、心理士の資格をもつロザンナ・ バーク教授(マッセー大学)は、理解力に関する試験のなかでの学生の不正行為と、 与えられた課題に対する労力投資のあいだにつながりを見いだしています。バーク教授は、評価課題から生じるストレスや自信不足が盗用・ 剽窃やその他の不正行為の前触れとなると指摘し、そのような試験は学習の役に立たず、それ自体が意図しない障壁となると説明します。

過度に成績にこだわると学生の健全な野心に逆効果であること、 包括的な学習と評価の共同設計が学生のアイデンティティを強化する可能性があることを指摘したうえで、バーク教授は「学習評価を、 学習の方向付けや決定の原動力にすべきではありません。学生の原動力は、学びたい・知りたいという野心・モチベーション・ 内なる衝動に結びついたものであるよう、教員が支援する必要があります」と結論づけます。つまり教授は、学生の学習体験の設計こそ、 評価の安全性の軸であると述べているのです。

  1. オンライン試験の監督

ハイステイクス・テストによる総括的評価から、ローステイクス・テストをより頻繁に実施する形成的評価への移行が進みつつありますが、 いまでも試験は学問的な期待を背負って重要な役割を果たしています。たとえば、医学や法学などのように認定機関を通じて正当化されている授業やカリキュラムでは、 いまだに卒業学生に対して総括的な試験を課す方法に頼っています。過去2年間、そのようなテストを遠隔で実施すると、 通常の対面式のような試験監督ができないというジレンマに直面し、オンライン試験のための監督機能(プロクタリング機能) を導入する教育機関もあらわれました。

そのような選択を避けた教育機関もありましたが、その戦略はプライバシーやデータインテグリティ(データの完全性)、 アクセス性に関する問題を提起し、学生・教員ともに評価の安全性の解決策としてオンライン試験監督を正当化することに懸念を示しました。 そのような試験管理を強要するときの倫理責任の問題は別として、それが不正行為に対してどの程度、効果と影響があるのかも検証されています。 オンライン試験監督のソフトウェアやプロトコルには大きな差があり、事例ごとに測定するのが最適ですが、 ホールデンらの研究はある種の基準を提供しています。「データによると、オンライン試験監督は、とくにテスト受験者の確認に関して、 不正行為の防止に一定の役割を果たしている。それらがもっとも効果を発するのは、不正行為の方法を研究していない学生が、 機会をうかがって不正行為を試みるのを阻止し、検知するときである」

フィリップ・ドーソン教授と共同開発された、TEQSAの「オンライン試験監督活用の戦略ガイド」では、 オンライン試験監督ツールの導入を決めるための10の主要原則が示されています。なかでも強く推奨される2点は、 評価設計の決定プロセスにおける最終手段として少しだけ使用すること、スタッフと学生の能力向上を保証し、 サポート体制を常に万全にすることです。

今後、この分野では、技術投資を通してシームレスで人間味のあるリモート試験監督を実現することで、さらなる発展が期待できます。

評価の安全性を守るための、その他の対策

評価の安全性を守りたい教員にとって、複数の対策の組み合わせが最善策であることは明白です。ホールデンら(2021) の前述の研究ではアカデミック・インテグリティに基づいた行動をうながすための「オンライン試験管理の手順」や「試験監督機能に替わる手段」 が言及されています。それらの対策には、決まった時間に試験を実施すること、出題順序をランダムにすること、 試験時間すべてを使いきるような試験をつくること、試験問題へのアクセスは1回に制限すること、ロックダウンブラウザ (コンピュータの他機能を一時的に使えなくするブラウザ)の使用を義務づけること、 学期ごとに試験問題の3分の1以上を変更することなどが含まれます。

また、試験以外の場面について、ドーソン教授は次のことを推奨しています。

  1. 不正行為のリスクについて学生と対話を続ける
  2. 学習機能を最大化するためにプログラム評価を導入する
  3. 個人の内省を促すタスク、個別具体的なタスク、生活に密着したタスクなどを含む、オーセンティックな評価を設計する
  4. 不正行為の結果を学生に見せるために、不正行為の検知体制を確立する
  5. 学習評価自体を定期的に見直し、安全性に不備がないか確認する
  6. 不正行為防止ツールの使用を検討する

学生の学習体験と快適な環境を最優先する

コロナ禍によるリモート学習への移行は、学習環境の混乱を引き起こし、多くの学生に何らかのマイナスな影響を及ぼしましたが、 良い面もありました。教育環境の大きな変化により、教育界は、学生との人間関係や原動力、評価の有効性、 厳しく管理されたエコシステムの外での学習成果の強度を再評価せざるを得なくなりました。

それは、2年前には教育界で一般的でなかった非同期型の学習手段が、今では広く受け入れられていることを見ても明らかです。当初は、 学生の動揺をまねくのではないかという不安や課題がありましたが、学生調査によると、大半の学生が完全な同時学習よりも、 自分のペースで学習できる非同期型の学習を好んでいます。もちろん、変化やイノベーションにはリスクや予測不能なことがつきものですので、 それらをうまく修正する必要があります。ドーソン教授は著書のなかで、 カリキュラムの成果に重大な影響を及ぼす学習評価にのみ集中するよう訴えています。すべての試験や課題について不正行為対策を試みると、 教育機関のリソースが足りなくなるばかりか、不信感が芽生えて学生と教員の人間関係に支障をきたし、 学習成果を正確に測定できなくなる恐れがあります。

学習評価の安全性と学生の快適さを両立させることが重要なのです。ガイ・カーティスらも、学生の学習評価への否定的な感情・ ストレスと不正行為の意図との相関を研究 し、「高等教育機関の教員は、評価設計や締め切りによって生じるストレスが、 学術不正のリスク要因となる可能性を検討する必要がある」と述べ、評価枠組みのなかで負の感情を払拭することを提唱しています。