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学生の可能性を広げる、建設的フィードバックの5つの例 | ターンイットイン

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建設的フィードバックは学習の重要な一部であり、学生の成長に欠かせません。学生の学習意欲を喚起し、教員と学生の強い絆を気づくのに役立ちます。とはいえ、「建設的」と「フィードバック」を効果的に両立することは難しいかもしれません。
なぜなら、建設的なフィードバックであっても教員から批判された学生は、その情報を受け入れることができず、成長の機会を逃す恐れがあるからです。また、そのようなフィードバックが学生のやる気を削ぎ、学習意欲を低下させ、自信を失わせる恐れもあります。さらに問題を複雑にするのは、学生の学びは多様で、フィードバックの受け取り方や吸収方法も異なれば、感情や知性の発達の度合いも一人一人異なることです。
すべての学生に同じ方法で教え、同じ結果を期待することなどできないことは周知の事実です。これは建設的フィードバックにおいても同じです。最大の効果を得るためには、フィードバックの内容や学生のニーズ、その他のさまざまな要因に応じて建設的フィードバックの実施方法を変える必要があります。
本記事では、ジョン・ハッティ博士の「次にすべきこと」型のフィードバックを中心に、建設的フィードバックの例と、効果的なフィードバックの価値について探ります。また、さまざまな学年の教員がすぐに実践に生かせるように、主要な例も紹介します。

建設的なフィードバックとは何か?

1992年、ジョン・ハッティ博士は、複数の科学論文をメタ分析し、「フィードバックは学生の学力に良い影響を与えるものの1つである」ことを発見しました。これはサドラー博士が提唱した、良いフィードバックは学生の今の学力と、目指す学力との差を狭めることができるという概念に基づいています(Sadler, 1989)。
ここで、具体的な内容に進む前に、「建設的フィードバック」の定義について見ておきましょう。建設的フィードバックの定義にはばらつきがあり、誰もが認める単一の定義があるわけではありません。
例えば、アルゼンチンのブエノスアイレスで、医学生と研修医のパフォーマンスについて研究する研究者は、「臨床的状況で観察されたパフォーマンスの記述を通して、学生や研修医に情報を与える行為」という割り切った定義をしています。仕事環境では、「望ましい行動を強化」するフィードバックという定義や、「可能性のある部分を改善するための支援」といった、教員の指導目標に近い定義もよく耳にします。
ハッティ博士とクラーク博士は2019年の著作で、フィードバックとは、学習目標と現状について学生が理解するのに役立つ、学習課題の情報であると定義しています。
議論を進めるために本記事では、「建設的フィードバックとは、フィードバックの提供者が良い結果を生みだす意図をもっていること」と定義します。この便宜上の定義に含まれる重要な要素は、他のさまざまな定義にも共通します。通常、教育において「良い結果」とは、成長や向上、学びを意味します。そのためには、フィードバックの中に明確な学習目標と成功基準を含め、目標達成に向けて学生の意欲を高めるのが一般的です。

建設的フィードバックの適切なタイミングは?

このタイトルを見て、「毎回では?」と思ったかもしれません。それはその通りです。すべてのフィードバックが建設的フィードバックになるのが理想です。しかし現実的な答えは、「できるだけ迅速かつ頻繁に」と言えるでしょう。
学習者の成長にもっとも良いのは、学びを定期的に補強することです。これは、どの年齢の学習者にも言えることですが、特に若い年齢層に当てはまります。若い学習者は、建設的フィードバックをできるだけ定期的かつ迅速に受けることが最善です。多くの研究(インディアナ大学の研究者による研究など)が、学生は学習後すぐに建設的フィードバックを受け取ると、情報の記憶、課題の理解、学習成果が高まることを示しています。
もちろん、適切なタイミングに関してや、どれくらい迅速であればいいのか、といった議論はあります。カーネギーメロン大学では1990年代半ばから、独自の数学ソフトウェア「コグニティブ・チューター」を使用しています。このソフトウェアは数学の問題について学生に即座のフィードバックを提供するもので、同大学によると、このソフトウェアを用いた学生はそうでない学生に比べて、標準試験などさまざまな試験で好成績を収めたのです。


対照的に、デューク大学とテキサス大学エルパソ校の研究では、1週間遅れでフィードバックを受け取った学生は、即座にフィードバックを受け取った学生よりも、新たな知識をより効果的に記憶していたことが分かりました。面白いことに、1週間遅れでフィードバックを受け取ったグループの学生は成績が良かったにもかかわらず、即座のフィードバックを好んだと報告されています。これは、実際の効果と実感される効果のあいだにメタ認知的な断絶があることを示しています。1週間の時間があくことによって試験当日の感情の高ぶりがおさまり、試験後のフィードバックをより冷静に受け止められる精神状態になったのでしょうか? あるいは、1週間遅れのフィードバックには、即座の一般的なフィードバックよりもはるかに詳細で、個別化されたアドバイスが書かれていたのかもしれません。さらに、この研究は試験の数週間や数ヶ月後のフィードバックではなく、1週間後のフィードバックを検証したことも重要です。つまり、建設的フィードバックの効果を最大化するには、1つの試験を実施して次の試験を実施するまでのあいだに、試験の直後から1〜2週間のうちにフィードバックを返す必要があると言えるでしょう。

上述のように、フィードバックの質もフィードバックの効果に影響を与えます。教員が個々の学生に応じて調整した、実行可能なフィードバックを提供すると、それが試験の数分後か、数日後かに関わらず、学生はその建設的フィードバックを進んで受け入れ、生かすことができるでしょう。

なぜ建設的フィードバックが役立つのか?

建設的フィードバックが効果的な理由は、学生が自分の学びを改善するための行動に好影響を与えるからです。また、迅速なフィードバックは、学生が次の試験に備えるために必要な情報をタイムリーに得ることができるため、学生の学びのワークフローのなかでうまく機能します。
前向きで意欲があり、しっかりサポートを受けた学生は成功する一方で、ストレスがたまっていたり、やる気がなかったり、あるいは挫折を感じている学生は苦労しがちであることは、研究の成果を待つまでもなく明らかです。それでも、2007年のレビュー研究2010年の研究などのように、それを如実に証明する研究は多くあります。
教員のフィードバックの仕方が、学生の意欲を引き出して前向きにさせるか、やる気をくじいて不満をためるかを大きく左右します。要するに、建設的フィードバックを通して、学生が自分の成長と進歩の主導権をもつ機会を与えることで、効果的な学習の土台を築くことができるのです

どのように建設的フィードバックを実施するか?

建設的フィードバックとは何か、それがいかに重要かを理解することは大切です。しかし、それを有効かつ生産的な方法で学生に提供できるかどうかはまた別の問題です。ここでは、建設的フィードバックを成功に導くいくつかの要因について見てみましょう。

  1. 具体的に
    「よくできています」という言葉は、学生の自信を高めますが、曖昧です。学生は試験のどの部分を褒められたのか分からず、なぜ「すばらしい」「すごい」ではなく、「よい」なのかも疑問に思うかもしれません。フィードバックには「よくできた」以外にも多くの種類があります。反対に、「もう少し努力しましょう」というアドバイスも、どの部分がどれくらい努力が必要なのか分からないため、同様に曖昧です。また、否定的なコメントは(肯定的なコメントの反対で)学生の不満を助長したり、学生の自信を傷つけたりする恐れがあります。具体性が重要であることには科学的な根拠もあります。可能なかぎり、教員は時間をかけて、個々の学生に特化したフィードバックを1対1で学生に提供すべきです。
  2. 目標志向で
    学生の個々の学習目標に合致する建設的フィードバックを作成する必要があります。受け取ったフィードバックが自分の目標達成を助けてくれると理解した学生は、そのフィードバックをうまく吸収するでしょう。
    ターンイットインのベテラン教員チームはジョン・ハッティ博士と協力して、「次にすべきこと」を示すフィードバックの効果を研究しました。これは目標志向型の建設的フィードバックと同じもので、形成的かつ慎重に応用すると、学習成果を劇的に向上させることが分かりました。
    学生が文章を修正する可能性を高めるには、以下の3つの要素をフィードバックに含めるといいでしょう。

    1.問題点:当該課題に関連する具体的な問題点を詳細に明示する。
    2.関連性:課題に求められる期待値を、フィードバックと明確に関連づける(例:ルーブリックの活用)。
    3.行動:答えを教えるのではなく、学びを適切に方向づける「次のステップ」を示す。

    また、質の高いフィードバックとは、答えをそのまま学生に教えることではなく、学生が自分で考え、推論し、学習を応用できるように、ガイドラインや基準値を提示することであることも覚えておいてください。
  3. 慎重に
    前述のように、「建設的」と「フィードバック」をうまく両立するのは難しいものです。しかし、たとえ困難でもその方法を学ぶことが重要です。なぜなら、フィードバックの提供方法が、学生の受け取り方に大きな影響を与えるからです。
    学生が自信を失っていませんか? フィードバックで改善箇所を指摘する前に、かれらが達成できたことを認めるといいかもしれません。見られていることを意識すると、能力を発揮できない学生もいるもかもしれません。改善点を長々と連ねたリストを示すと、学生を圧倒してしまうかもしれませんので気をつけましょう。
    建設的フィードバックには、学習目標と課題の評価基準を組み込むとともに、学生の得意な学習スタイルや情緒的なニーズも取り入れると効果的かもしれません。言うまでもなく、学生の年齢や学問分野、学期やカリキュラムのどの時点で実施するかなど、学習段階ごとにフィードバックが異なります。

建設的フィードバックの例

上記のことすべてを念頭において、建設的フィードバックの5つの例を議論しましょう。以下では、「次にすべきこと」を示すフィードバックが適用される状況を見ていきます。フィードバックは、学生が直接見ることのできるルーブリックや評価基準に連動させると、より効果的であることを覚えておいてください。以下はフィードバックに使えるテンプレートです。このテンプレートの前後に「本文の段落に説明を加えようと努力していることが分かります」「このセクションに関して綿密なリサーチをしたことがうかがえます」といった励ましの言葉を追加するのもいいでしょう。


コメント例

例1:小論文のための建設的フィードバックの例

採点してフィードバックを付けなければならない大量の小論文をまのあたりにすると、すべての提出物に有意義なコメントをつけるのを負担に感じるかもしれません。小論文ごとにすべての問題点を指摘しようとするのではなく、一観点ずつ(文章構造、文法、句読法)見ていく方法をおすすめします。こうすることで教員の負担が減るだけでなく、学生にとっても理解しやすいフィードバックになります。


例:この文は読み手が理解しづらいかもしれません。もっと明確に意味を伝えられるよう言い換えましょう。

例2:ルーブリックと関連づけた建設的フィードバック

ルーブリックは課題の期待値を学生に伝えるもので、学習に不可欠です。ルーブリックがプロジェクトと有機的に結びついていると、教員も学生もどうすれば課題を最高レベルで完了できるのか明確に理解することができます。さらに建設的フィードバックをルーブリックと直接結びつけると、学生が課題の目標達成のために足りないものを理解できるようになります。
例:ルーブリックでは、本論文で3つ以上の引用を含めることを求めています。このセクションに他の引用を追加して、このトピックに関するあなたの考えが現行の研究といかに合致するのかを読者が理解できるようしましょう。Turnitin Feedback Studioでは、既存のルーブリックの追加や、既存のルーブリックの変更、課題ごとに新たなルーブリックの作成が可能です。

例3:QuickMarkの建設的フィードバックの例

Turnitin Feedback StudioのQuickMarkコメントを活用することで、学生の提出レポートに教員が簡単にコメントを残すことができます。Turnitin Feedback Studio内に収録されている膨大な量のQuickMarkセットからコメントを選ぶことも、よく使うコメントを自分で作成することも可能です。いずれにせよ、学生の成果物に「次にすべきこと」を示すフィードバックを残す方法としてQuickMarkは最適です。

QuickMarkの「次にすべきこと」型フィードバックの例

例4:QuickMarkの建設的でないフィードバックの例

「次にすべきこと」型フィードバックではない例を見ることも役に立ちます。以下の画像は、真面目な教員が議論型の小論文で求められるエビデンスの種類について、学生にアドバイスしているフィードバックです。「問題点」と「行動」が抜けているため、学生は「主張の根拠を改善するためには具体的にどこを改善すればいいのだろう? どのように書き直せばいいのだろう?」と疑問に思うでしょう。

QuickMarkの「次にすべきこと」型フィードバックではない例

例5:ライティング以外の課題における建設的フィードバックの例

STEMの授業を教える教員は、「これを自分のフィードバックにどのように組み込めばいいのだろう?」と思うかもしれません。「次にすべきこと」を示すフィードバックは、英語教育やライティングコースの課題で適用するのがもっとも簡単ですが、「問題点」+「関連性」+「行動」の構造に従うと、どの学問分野の教員もこのタイプのフィードバックを実践することができます。以下は、コンピューターサイエンスのプロジェクトに建設的フィードバックを応用する例です。


例:ルーブリックでは、できるだけ値の「ハードコード」を避けるよう求めています。この行では、配列サイズを参照する方法が他にないか考えてみましょう。

まとめ:学生のための建設的フィードバック

教員は大きな影響力を持っています。その力で、伸び悩む学生を改善に向けて支援することも、優秀な学生をさらなる高みに後押しすることもできます。その力が発揮される場所がフィードバックです。もしフィードバックが否定的、懲罰的、あるいは曖昧なものであれば、学生を苦しませることになります。反対に、明確で簡潔、そしてもっとも重要なことに建設的であれば、フィードバックが学生の学びと成功を助けます。
建設的フィードバックを学生に与えることの重要性と、それを比較的早めに実践することの重要性は多くの研究で示されています。フィードバックが早ければ早いほど、その内容は学生の記憶に新鮮な状態で残ります。フィードバックの内容が建設的であればあるほど、学生はその内容を吸収できます。建設的フィードバックを定期的に行えば行うほど、学生は学びを深め、次の試験に向けて準備することができます。建設的フィードバックを効果的に提供することの意義は、いくら強調してもしすぎることはありません。具体的で、すぐに行動に移せる洞察を提供することで、学生の自己改善の意識を育み、学生が能力を最大限発揮できるよう後押しすることができるのです。