同義として捉えられがちな「類似性」は「剽窃」。これら2つは別の概念です。既成概念をくつがえして混乱を招くかもしれませんが、 「類似性」と「剽窃」に関する誤解を解いたうえで、この提言をもう少し掘り下げて状況を整理してみましょう。
私たちTurnitinは2013年から、「Turnitinが盗用・剽窃の検知を行うのか」という疑問に対し、 ブログ記事や公衆の機会などあらゆる場面を通じて、回答を発信してきました。しかし、 いまだに世界中の多くの人がその疑問を抱えていることを目の当たりにします。当社の教員コミュニティTurnitin Educator Network (英語のみ)では、世界中のTurnitinユーザーが集まって互いに質問したりアイデアを共有したりしていますが、毎年、 この話題が挙がります。また、教員や学生たちからも、この疑問に対して直接問い合わせいただくことがあります。当社の製品導入サポートチームも、 この話題がトレーニング中にユーザーから何度も取りあげられると報告しています。
この質問に対する答えは、「Turnitin社は盗用・剽窃の検知を行いません」です。私たちは、教員や研究者をサポートし、 判断と決断に役立つツールや知見を提供することを目指していますが、「盗用・剽窃」の検知を行っているわけではないです。 いくつかの疑問を解消するために、今回は前後編の2回に分けて、よくある質問を取りあげ、分かりやすくお答えしていきます。
このシリーズの前編では一般的な質問をとりあげます。後編では「類似性か、剽窃か?」 についてより教育的な側面に特化した質問をとりあげ、それが教育実践にどのような影響をもたらすのかを具体的に掘り下げます。
問題を明確にするための5つの質問
- Turnitinはどのくらいの頻度で盗用・剽窃を検知するのか
盗用・剽窃の検知を行うのは私たちの役割ではありません。私たちの役割は、教員が結論を導きだし、 決断を下すのに役立つための情報をご提供することです。Turnitinが学生と直接関わる専門的な教員の判断に取って代わることはありません。 私たちにできることは、当社の製品を通したお客様の業務のサポート、および効率化です。
- 盗用・剽窃を検知しないなら、何を検知するのか?
「類似性」を検知します。そのため、当社では検出結果を「類似性レポート」と呼んでおり、「盗用・ 剽窃レポート」や「不正行為レポート」といった呼び名をつけていないことに気づかれると思います。当社の製品は「盗用・剽窃」を検知しませんし、 それを判断することもしません。その代わりに、教員が正しい判断を下すために必要な情報を提供したいと考えています。例えば、 指導のチャンスとなる「教育の好機」を、いつ、どのようにつくりだし、学生のスキル不足を補うための指導を行うべきか、と言うことです。 指導すべきスキルとしては、言い換え (パラフレーズ)などの基本的な文章スキルや、引用に関する特定のスキルが挙げられます。あるいは、 時間管理といった実行機能レベルで必須のスキルの場合もあります。
当社は、学生のこれらのスキル不足が、意図的であれ不注意であれ、盗用・剽窃が発生する根本原因となり得ることを把握しているので、 この領域に関して指導し、フィードバックを与え、サポートすることに特化した機能を開発してきました。Draft coach (英文のみ対応)のような形成的な指導ツールでは、学生が課題を提出する前に自らチェックすることで、文法や言語の用法、 引用、類似性についてフィードバックを受けながら書き直すことができます。
- 「類似性」と「盗用・剽窃」の違いは?
Turnitinのソフトウェア(Turnitin Feedback Studio, iThenticate) は学生の提出物を、インターネットや学術論文、他の学生のレポートなどを含む膨大なデータベースと比較し、「類似性」を検知します。 (*iThenticateの場合は他の学生レポートは含みません。)学生の提出物が、 当社のデータベースに含まれる内容とどれくらい似ているか、その割合をパーセンテージで示し、類似性レポートで報告します。類似性レポートでは、 学生や教員が、具体的にどこの箇所が、どれだけ合致しているのかを詳細に確認することができます。
メリアム=ウェブスター英英辞典では、 plasiarize(剽窃する)という語を「既存のソースから派生したアイデアや製品を、新たなオリジナルの物として提示する行為」 と定義しています。つまり、他人の作品を自分のものであると意図的に表現することを意味しています。これは、 類似性とはまったく異なります。
では、類似性が盗用・剽窃になり得ることはあるのでしょうか?もちろん、その可能性はあります。しかし繰り返しとなりますが、その判断は、 学生と密接に関わり、状況を理解するために必要な情報すべてをもつ、教員に委ねられています。当社のソフトウェアは、 そのような複雑な前後関係すべてにアクセスできるわけではありません。
- 盗用・剽窃はどの程度までなら許されるのか?
「盗用・剽窃」はアカデミック・インテグリティの違反であり、決して「許される」ものではありません。この質問が 「類似性スコアはどれくらいまで許されるのか?」に代わると、別の議論になるため、本シリーズの後編で紹介します。
「盗用・剽窃」は許される行為ではありませんが、「類似性」の検証はつねに悪いことだけではなく、学習のすばらしい指標にもなり得るのです。 イギリスで長年Turnitinに対して支持してきた人物は、「多くの場合、類似性自体に問題はなく、類似していることは、 学生が幅広く読んで研究し、当該分野の主流の見方や情報源を認識していることを示す可能性もある。これは、 自分の見方や主張を形成するために重要なステップである」と述べました。
- 意図的でない盗用・剽窃とは何か?
意図的でない盗用・剽窃、あるいは、偶発的な盗用・剽窃は、スキル不足から生じることが多く、スキル不足の学生が、 意図せずに他者のアイデアを自分のものとして発表してしまうのです。そのような学生は、言い換えが苦手であったり、 引用のスキルを習得していなかったりする可能性があります。あるいは、言語習得に課題を抱える学生は、 他者のアイデアを丸写ししてしまうこともあるかもしれません。具体的な理由はどうであれ、盗用・剽窃の意図はなかったのかもしれません。 その一方で、明確な意図がある場合や、教員がその意図を確かめるためにより多くの情報を必要とする場合もあります。
以上の内容をまとめると、盗用・剽窃は決して容認されるものではない一方で、「類似性」と「盗用・剽窃」は同義ではないということです。 そして、Turnitinがサポートするのは盗用・剽窃の検知ではなく、類似性の検知です。当社では、 顧客中心主義という価値観を非常に大切にしています。当社のお客様は世界中の教育者と研究者の方々であり、 その専門の知識とプロフェッショナルな判断に大きな敬意を払っています。そのため、私たちは、教員や研究者をサポートし、 判断と決断に役立つツールや知見を提供することを目指しています。
本シリーズの後編では、盗用・剽窃と類似性の違いが指導実践にどのような影響を与えるのかについて、 何が有効で何が効果的ではないのか、指導目標を達成するためにどのようにツールを活用すればよいのかについて取り上げます。