2020年3月に突然始まったリモート学習への移行は、バックネル大学の大きな課題であった。学内の最優先事項は、 学生と教職員の安全を確保しつつ、学生の支えとなる充実した学習環境を提供し続けることだった。その実現に向けて、従来の対面式から、 それと同等の学習効果があるリモート環境へと移行する必要が課題だった。リモート学習への移行に伴い、 学生の学習状況把握と対応が難しくなったが、リモート環境を成功させるには学生の学習状況把握と対応が不可欠であることも明確になった。 バックネル大学はこの一刻を争う変化に対処できるよう、教職員が新たなツールを 自由に試せるようにしたものの、 教職員にとっても山ほどある選択肢から適切なものを迅速に選定するのは気の遠くなるような作業だった。
トンプソン准教授は、すでにバックネル大学の数学科とコンピューターサイエンス学部で広く利用されていたGradescopeで、 リモート環境という新たな課題の負担を軽減する方法を探った。当初、教授は時間短縮のためにGradescopeを導入したが、 リモート化が進むにことにより厳格な学習評価と学生の積極的な参加を維持する必要性が明確になった。
Gradescopeによる自宅学習課題へのフィードバックとリモートでの学習評価を通じてトンプソン准教授は学生との接点を増やし、” 学生の積極的な参加”に重点を置くバッ クネル大学の方針を維持することができた。 トンプソン准教授はGradescopeを利用し始めて、 質の高いフィードバックをこれまでの方法よりも素早く学生に伝えられると気づいた。
その結果、特にサポートが必要な学生 に対して、個別に指導できる時間が増えた。また、 課題提出の確認も自身がこれまで使っていた他の学習ツールと比べて簡単かつ迅速なため、進捗を正確に把握し、 必要に応じて間に入って指導できることにも注目した。 学生たちに明らかなメリットがあることに加え、 採点の作業工程にも時間を短縮できるなどの改善効果があることも分かった。トンプソン准教授は、AIを用いて学生の回答パターンを認識し、 整然と効率的かつ公平に採点を進められるようグループ分けする採点 機能、 そして20個の似通った回答を25秒で採点できたことは准教授にとって驚きだった。 そして、Gradescopeを活用したことにより、 捻出できた時間をリモート指導や評価方法の改善にあてられるようになった。
バックネル大学の電気・コンピューター工学部が2020年10月にアメリカ国立科学財団か ら200万ドルの助成金を受けた際に、 Gradescopeの採用が第一候補となった。「この助成金の支援対象の一つに、支援ツールを選定するというものがあります。 Gradescopeはさらに試してみたいツールの1つでした。」
学生の学習成果と自身の指導が目に見えて改善したことを受け、トンプソン准教授は同じ学部や工学系の教員全体に Gradescopeをすぐに導入するよう呼びかけている。